夏へのさそい . 5

「…分かった分かった。賭けをしようじゃないか」

人差し指を立てて、にこやかな笑み。
次は言い出すんだこの人は、と永野が身構える。

「僕と一ヶ月、この島で暮らそう」
「……は?なんで自分がこんな所で暮さなければならないのですか」

引きつった笑みを浮かべる永野。
石塚は気にしないで話を続行する。

「君だよ、永野。僕はこの一ヶ月、全力で君を楽しませよう。そうすれば、君もこの島の魅力がわかるはずだ」
「そんな、馴れ合いのようなこと…!」

きっと睨みつける永野を、まったく気にせずに石塚の話は続く。

「もし、一ヵ月後、君がこの島に一ミリも愛着が湧かなかったら、俺は君と一緒に本島へ戻る」

約束だ、と小指を差し出す石塚。

「それは…確実に守られる約束ですか?」

永野の問いかけに、とびきり柔らかい微笑みを浮かべて石塚が頷いた。
それに釣られる様に、最後の確認を取る。

「…信じていいんですね?」
「当然だ」

永野の小指が、石塚のそれと固く絡み合った。