隊長日和 . 1

「かくして、石塚の巧みな話術の前に永野は感動の涙を流し同棲を決意したのでした―――」

朗々とした声で語り終えると、ごつごつしたガラスのコップを傾けてウイスキーを喉に流し込んだ。
余裕綽々の態度に永野の血管は決壊ぎりぎりな生活を強いられている。

「なぁにが同棲ですか!実際には軟禁状態じゃないですか!!自分を飼い猫か何かと勘違いしてるんじゃないですか!?」

怒りをあらわにしながらも、酒を片手に縁側に寝そべる石塚の横にお手製のおつまみを置く永野。石塚の思う壺である。

「その割には張り切ってるよね。エプロンまで着けちゃってさ」
「あなたが着ろと仰ったんじゃないですか!!」

時を遡ること同棲一日目の朝、しぶしぶと朝ごはんを作る永野に寝ぼけ眼の石塚がエプロンを手渡した。
『大事に使ってね』という言葉とともに。(しかもエプロンは花柄)

「状況は整った。実に良い眺めだよ?」
「なんの状況ですか!」

永野の作ったおつまみをひょいとつまんでもしゃもしゃと咀嚼してこくんとウイスキーで流し込む。
目の前に広がる夕日に、茶色の液体が反射して美しい。

「未成年なのにまたそんなに呑んで・・・着物も着崩れてますよ!だらしがないです!」

かいがいしく石塚の着ている着物(いつも風呂上りはこれを着ている)の裾を直す永野。
なんだかんだと微笑ましいコンビである。